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逆転のフルスイング第5試合  〜俺たちのWBC 西成から愛を込めて〜 全7試合 短編小説

逆転のフルスイング

〜俺たちのWBC 

西成から愛を込めて〜 全7試合

 

「WBCが見られへん?……それ、スリーアウトや!」

西成の酒場から始まった、

150億円の独占契約に挑む男たちの逆転物語。

 

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居酒屋でビールを飲みながらテレビで野球中継を見ているお客さんのモノクロ画像

いつもそこには野球があった

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※本作はフィクションです。

実在の団体・人物とは関係ありません。

【第5試合 俺たちの甲子園】


大黒屋ではその日ラジオで初戦の韓国戦が
流れていた。


「ラジオじゃわからへんが韓国強いな、
日本はもっと思いっきりやらないかん」

「代打でワシや!」

「やっさんみんな思いっきりやっとるんちゃうの、
知らんけど。」

「このまま日本は負けてしまうんちゃうか、
堪忍してくれ」

とたけさんがラジオに向かって手を合わせ祈っていた。


試合も終盤になりそしてリードされたまま

日本の最後の攻撃になった。


「9回裏日本はツーアウトランナー2塁、
バッターはサトウ、今日はここまで3三振。」

「なんとかここはサトウのバットで
追いついて欲しいですね」

とラジオから実況が流れていた。

「サトテル!頼むでほんま!しばいたれー!!」

と多くのお客さんの声援で大黒屋は

さながら甲子園球場のような
盛り上がりになっていた。

そう例の一件の影響もあり大黒屋には

多くのお客さんが詰めかけていたのだ。

「かっ飛ばせーサトテル!かっ飛ばせーサトテル!」

店内は最高潮だった

「空振り三振ーー!」

とアナウンサーの絶叫がラジオから流れた。



そして

「あちゃースリーアウトや」

とやっさんの声が、

祭りの後のような虚しさを連れて店内に響いた。

床に落ちたスポーツ新聞が、
どこか寂しげに見えた。


そして日本は初戦の韓国戦に敗れた。

.
.
.

「サトテル4三振やったな、ほれみてみー!
ラジオじゃ応援も届かんわ!しゃあない」

と先ほどまでの熱狂が嘘のようにもうすでに

数人しか残っていない大黒屋で

やっさんは少しうなだれながら
ビールを飲み干した。

.
.
.

「監督少し時間ありますか」

と試合後のロッカールームで

サトテルはイバタ監督に話しかけた。

「今日はすいませんでした、話なんですが」

とサトテルが口を開くと

イバタ監督が先に

「少し聞いたぞ、
なんとかテレビ放送できないか


練習も出ず朝から関係者の
ところに行ってたらしいな。


大丈夫かちゃんと寝てないだろう」

 

サトテルが静かに


「おれ日本のみんなに
テレビで見てもらいたいんです。

なんの為に俺たち野球やってんすか、

大企業の金のために
野球やってるんじゃないですよ。」


「野球をみんなに見て欲しいんです!!!」


サトテルは抑えていた
感情が止めることができずに

大粒の涙を流していた。

沈黙が続いたあと静かに
イバタ監督が口を開いた

「わかった」


それだけ伝えると

イバタ監督は通路の奥へ消えて行った。

第5試合ゲームセット

次回【第6試合準決勝 俺たちのNHK】へ続く

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〜Sincerely,Stillframe〜